更新日:2025年6月2日
目次
会社の課題解決や社員満足度の向上に取り組む上で、経営層と社員が直接対話できる「職場懇談会」は非常に有効な施策です。実際に、厚生労働省の調査によると、職場懇談会を実施している会社の約8割が「成果があった」と回答しており、組織運営の改善に大きな効果のあることがわかります。
しかし、「具体的にどう進めればよいのかわからない」「参加者に満足してもらえるか不安」といった悩みを抱える担当者も多いでしょう。
本記事では、職場懇談会の概要から開催状況、開催するメリット、成功させるためのポイント、懇談会後の懇親会で盛り上がるおすすめの企画まで詳しく解説します。
職場懇談会とは、会社における業務運営や働いている環境などについて、社員同士で話し合う会合のことです。
主な目的は、社員が日常的に抱いている会社に関する疑問や要望を経営層が直接聞き取り、働く環境の改善に活かすことです。また、経営方針や会社の方向性などについて、経営陣から社員へ直接説明する機会としても活用されています。
そのような双方向のコミュニケーションを通じて、会社全体の結束力が向上し、業務効率の向上にもつながります。
2000年に厚生労働省が実施した「労使コミュニケーション調査」の結果概要によると、職場懇談会を実施している事業所は全体の52.7%でした。
会社の規模別に開催状況を見ると、規模が大きいほど職場懇談会の開催率が高い傾向にあります。5,000人以上の大規模の会社では約7割が開催している一方、中小規模の会社では5割を下回る結果となりました。
【会社の規模別の開催状況】
会社の規模 | 開催している割合 |
5,000人以上 | 69.5% |
1,000~4,999人 | 56.1% |
300~999人 | 54.4% |
100~299人 | 49.3% |
50~99人 | 46.0% |
30~49人 | 48.7% |
参考:厚生労働省『令和元年「労使コミュニケーション調査」 結果概要』
産業別で開催状況を見てみると、電気・ガス・熱供給・水道業が84.7%と最も高く、金融業・保険業が77.3%と続いています。特に、公共性の高い業界や規制業界において、職場懇談会の実施率が高い傾向にあります。
【産業別の開催状況】
産業 | 開催している割合 |
電気・ガス・熱供給・水道業 | 84.7% |
金融業・保険業 | 77.3% |
学術研究・専門・技術サービス業 | 61.6% |
建設業 | 59.0% |
情報通信業 | 59.7% |
複合サービス事業 | 58.6% |
医療・福祉 | 57.3% |
運輸業・郵便業 | 51.1% |
卸売業・小売業 | 50.2% |
参考:厚生労働省『令和元年「労使コミュニケーション調査」 結果概要』
なお、職場懇談会を開催した会社の79.0%が「成果があった」と回答しました。職場懇談会が単なる形式的な会合にとどまらず、実際に運営の改善に寄与していることがわかります。
職場懇談会の開催には、会社にとって様々なメリットがあります。ここでは主なメリット3つについて紹介します。
職場懇談会では、日常業務の中で社員が感じている課題や改善要望を、経営陣が直接聞き取ることができます。現場の生の声を通じて、通常の報告では見えにくい潜在的な課題を発見することが可能です。
例えば、業務プロセスの非効率さ、職場環境に対する不満、人間関係の悩み、研修制度の不備などについて、社員から具体的な意見が寄せられることがあります。
そのような情報は、運営の改善策を検討する上で極めて貴重な材料です。社員の不満や要望を早期に把握し対策を講じることで、社員にとって働きやすい環境となり、離職率の低下や生産性向上などにつながります。
職場懇談会は、普段はあまり接点のない経営陣と現場の社員、あるいは異なる部署の社員同士が顔を合わせる機会です。階層や部署を超えた対話を通じて、社員同士の相互理解が深まり、信頼関係の構築にもつながります。
例えば、営業部門と技術部門の社員が同じテーブルで議論することで、お互いの業務内容への理解が深まり、今後の連携が円滑になる効果を期待できます。また、若手社員が経営陣と直接話をすることで、会社への理解が深まり、モチベーション向上につながるでしょう。
職場懇談会では、経営陣と社員が共通の課題に向き合い、議論を交わします。議論を通じて、会社全体が一丸となり目標に向かって取り組む意識が醸成される点も、職場懇談会のメリットです。
例えば、新しいプロジェクトの方向性について経営陣から説明を受け、社員からの質問や意見に対応することで、全員が同じ方向を向いてプロジェクトに取り組めるでしょう。また、会社の現状や課題を共有することで、社員一人ひとりが自分の役割を再認識し、会社への貢献意欲が向上します。
このような一体感の醸成は、チームワークの向上と業務の効率化、ひいては会社全体のパフォーマンス向上につながります。
職場懇談会を成功させるには、事前の準備が欠かせません。ここでは、職場懇談会を開催する基本的な手順を紹介します。
職場懇談会で参加者が主体的に意見を述べられるように、現場で関心の高い議題を選ぶことが大切です。事前に参加者にアンケートを実施して意見を募ったり、日頃の業務の中で課題とされている事項を整理したりして決定しましょう。
例えば、働き方改革の推進、働く環境の改善、研修制度の充実、業務効率化に向けたシステム導入など、社員の関心が高く、建設的な議論が期待できるテーマを選定します。また、議題は具体的で実現可能性のあるものにすることで、参加者のモチベーションを維持することが可能です。
厚生労働省が実施した「労使コミュニケーション調査」の結果概要によると、職場懇談会で話し合われた議題は以下の通りです。
話し合われた議題 | 割合 |
日常業務の運営に関すること | 86.2% |
安全衛生に関すること | 66.6% |
経営方針、生産、販売等の計画に関すること | 49.5% |
教育訓練に関すること | 46.8% |
福利厚生に関すること | 35.8% |
賃金、労働時間等労働条件に関すること | 29.7% |
正社員以外の労働者に関すること | 16.2% |
同一労働同一賃金に関すること | 5.5% |
その他 | 10.0% |
参考:厚生労働省『令和元年「労使コミュニケーション調査」 結果概要』
職場懇談会で最も多く取り上げられているのは、日常業務の運営に関する内容です。次いで、安全衛生や経営方針など、働く環境の安全性や会社の方向性に関する議題も重視されている傾向があります。一方、賃金や労働条件、非正規雇用者に関する話題は比較的少ないことがわかるでしょう。
職場懇談会の参加者を選定する際は、多様な視点から意見を聞けるよう、バランスに配慮することが重要です。部署、役職、年齢、雇用形態などのバランスを考慮して、参加者を決定します。
例えば、各部署から代表者を選出したり、若手・中堅・ベテランの各層から均等に参加者を選んだりすることで、幅広い立場からの意見を収集することが可能です。また、パートタイム労働者や契約社員なども含めることで、多様な働き方に対応した議論を行えます。
効果的な職場懇談会を実現するためには、適切な司会進行役の存在が欠かせません。中立的な立場から議論を整理し、参加者全員の発言を促す役割を担うため、司会進行役には一定の能力と経験が求められます。司会進行役には、管理職やコミュニケーション能力の高い社員から選出することが一般的です。具体的には、人事部門の管理職や、社内で司会進行経験のある社員を選ぶとよいでしょう。
職場懇談会で話し合われた内容は、必ず議事録として記録し、参加者以外の社員にも共有しましょう。議事録に記載する主な項目は、以下の通りです。
【議事録の主な項目】
作成した議事録は、社内の掲示板やイントラネットなどで社員全員に公開します。議事録によって職場懇談会の内容が社内に浸透されることで、社員の改善活動への理解と参加意識が高まります。また、次回の懇談会での進捗確認にも活用できて、PDCAの観点からも有用です。
職場懇談会をより効果的なものにするために、以下のポイントを意識して実施することがおすすめです。
職場懇談会を実施する際は、最初にアイスブレイクの時間を設けることがおすすめです。アイスブレイクとは、緊張をほぐして参加者同士の距離を縮める手法で、通常、会議やワークショップなどの開始時に行われます。
職場懇談会では、経営陣と社員、あるいは異なる部署の社員が一堂に会するため、緊張した雰囲気になりがちです。そこで本格的な議論に入る前にアイスブレイクの時間を設けることで、リラックスした空気が生まれ、意見交換がしやすくなります。
例えば、簡単な自己紹介や、最近の趣味や休日の過ごし方など、気軽に話せる内容を共有することで、参加者の緊張が和らぎます。
当日、参加者の活発な議論を促すためには、事前に議題を共有しておくことが効果的です。議題の内容を前もって把握することで、参加者は自分なりに考えを整理し、具体的な意見や提案を準備して臨めます。議題に関連する現状のデータや過去の取り組み状況なども併せて共有することで、より具体的で実現性のある意見が出やすくなるでしょう。
参加者全員での一斉討論では、発言しにくいと感じる人が出てきたり、特定の人ばかりが発言したりすることがあります。そこで、参加者を少人数のグループに分けて議論を行うことで、より多くの意見を引き出せるようになります。
例えば、部署や役職の異なるメンバーを組み合わせた小グループを作り、まずはグループ内で自由に議論を行います。その後、グループの代表者が全体に向けて発表する形式を取ることで、より多様な視点から議論を行うことが可能です。また、小グループでの対話は、参加者同士の距離も縮まりやすく、その後のコミュニケーションの活性化にもつながります。
職場懇談会を開催した後は、続けて懇親会の開催をおすすめします。懇親会とは、参加者同士の親睦を深めることを目的とした集まりで、一般的に食事や飲み物を共にしながら、自由に会話を楽しむ場として設定されます。
職場懇談会の後に懇親会の開催がおすすめの理由は、懇談会での堅い議論の後にリラックスした雰囲気を作ることで、参加者の緊張がほぐれ、より自然な交流が生まれるからです。さらに、業務以外の話題を通じて参加者の人柄や趣味などを知ることにより、今後の職場でのコミュニケーションが円滑になる効果も期待できます。
【懇談会と懇親会の違い】
項目 | 職場懇談会 | 懇親会 |
主な目的 | 業務や働く環境についての意見を交換する | 参加者同士の親睦を深める |
雰囲気 | 比較的フォーマル(議事録あり) | リラックスした雰囲気 |
メリット | 職場課題の可視化、改善に向けた意見の収集 | 相互理解の促進、信頼関係の構築 |
懇親会を円滑に進行し、参加者の交流を深めるためには、あらかじめ進行の流れを組み立てておくことが大切です。基本的には、以下の流れでプログラムは構成されます。
上記のプログラムは、あくまで一例です。参加者人数や会場の状況、所要時間などに応じて、適宜調整しながら進行してください。
懇親会をより盛り上げ、参加者同士の交流を深めるために効果的な企画を7つ紹介します。
企画名 | 概要 |
BBQ | 屋外で炭火を使って肉や野菜を焼きながら食事を楽しむアウトドア企画 |
ビンゴ大会 | 数字が書かれたカードを使って行う抽選ゲーム |
クイズ大会 | 様々な分野の問題を出題し、参加者が知識を競い合うゲーム |
謎パ | 参加者全員が一つのチームとなって謎解きパズルに挑戦するゲーム |
以心伝心ゲーム | チームメンバー同士でお題に対する答えを合わせることを目指すゲーム |
格付けバトル | 高級品と一般品を見分ける体験型クイズゲーム |
キングオブラスベガス | 本格的なカジノゲームを安全に楽しめるエンターテインメント企画 |
それぞれの特徴を理解した上で、懇親会の目的や参加メンバーの構成に応じて、適切な企画を選んで取り入れてみましょう。
BBQは、屋外で炭火やガスコンロを使用して肉類や野菜、魚介類などの食材を焼いて楽しむ企画です。参加者同士が協力して食材の準備から調理、片付けまでを行うことで、自然と会話が生まれます。
開放感のある自然の中での実施により、普段のオフィスでは見られない一面を知るきっかけにもなります。また、準備や食事をしながら会話をするため、話題に困らない点も魅力です。
ビンゴは、5×5のマスに数字が書かれたカードを使用し、ランダムに選ばれた数字と一致した箇所に印をつけていくゲームです。縦・横・斜めのいずれかの列が揃った人は「ビンゴ」となり、勝者として景品を受け取るルールが一般的です。
ルールが非常に簡単で、年齢や性別、経験などに関係なく誰でも気軽に参加できます。運に左右される要素が強いため、普段は交流が控えめな参加者にも勝利のチャンスがあり、ビンゴをきっかけに会話が生まれることも期待できます。
クイズ大会は、幅広い分野から出題される問題に対して、参加者が個人戦またはチーム戦で回答を競うゲームです。一般常識、会社に関する問題、時事問題、雑学など幅広いジャンルから出題します。正解数に応じて順位を決定し、上位チームには景品を授与すると盛り上がるでしょう。
会社に関する問題を織り交ぜることで、社員は楽しみながら会社への理解を深めることが可能です。また、様々な分野から少しずつ出題することで、参加者それぞれが得意とする分野で活躍できる機会を提供できます。
謎パは、参加者全員が一つのチームとなって問題を解き、ミッションのクリアを目指すアクティビティです。各自に配られた謎のかけらを共有しながら進めていく必要があり、自然と会話や連携が生まれ、チームとしての一体感が高まります。
謎を解いたらミッションが出現し、すべてのミッションを達成できるとクリアです。ミッションは「出身県が同じ人を5人集めろ」というように、謎解きとは異なる内容のため、謎解きが苦手な人でも十分に楽しめます。
論理的思考力や観察力、ひらめきが求められ、年齢や役職に関係なく全員が活躍しやすいのも特徴です。会社ごとにカスタマイズが可能で、自社の業務内容や理念を題材にしたオリジナルの謎やミッションを取り入れるのもよいでしょう。
以心伝心ゲームは、お題に対して、チームの全員で答えを合わせるゲームです。「○○といえば?」というお題に対して、チーム内の全員が話し合いをせずにそれぞれの答えを予想し、全員の答えが一致すれば成功となります。
他のメンバーの考えを想像しながら答えるため、自然と相手への理解が深まります。思いがけない答えには笑いや驚きが生まれることも多く、会場の雰囲気が和みやすいのも魅力です。
簡単なルールで準備の手間も少ないため、気軽に取り入れやすく、他の企画と組み合わせるのもよいでしょう。
格付けバトルは、高級品と一般品を実際に比較し、一流の品を見極めるアクティビティです。紅茶、牛肉、絵画、ワインなどの多彩なジャンルから出題され、参加者は五感を使って見極めに挑戦します。
知識よりも感覚を頼りに進めるため、年齢や役職、知識に関係なく平等に楽しむことが可能です。参加者同士の反応の違いを楽しんだり、意外な結果に笑いが起きたりと、観ている人も盛り上がれます。
なお、既存の4ジャンルだけではなく、自社に関する問題を出題することも可能です。IKUSAの営業担当者にご相談いただければ、オリジナルの格付けをご用意いたします。
キングオブラスベガスは、ブラックジャック、ポーカー、ルーレット、バカラなどのカジノゲームを、賭け要素なく体験できるアクティビティです。弁護士事務所が監修しており、安心して参加できます。
プロのディーラーと本格的な専用機材の用意により、ラスベガスさながらの非日常な空間が再現されます。ゲームポイント制で進行し、初めてでも司会とディーラーのサポートにより置いていかれる心配はありません。運や戦略性、判断力が試される要素が多く、普段のオフィスでは見られない社員の一面を引き出せる点でも好評です。
職場懇談会は、経営陣と社員が直接対話することで、会社の課題を共有し、信頼関係を築ける取り組みです。厚生労働省の調査では、開催している会社の約8割がその効果を実感していることが示されています。
懇談会を成功に導くためには、議題や参加者の選定、効果的な進行、議事録の共有など、徹底した準備が不可欠です。加えて、アイスブレイクの実施や少人数での議論形式の採用、議題の事前共有といった工夫により、より活発で有意義で円滑な意見交換が実現します。
また、懇談会の開催後には、リラックスした雰囲気で交流できる懇親会の開催がおすすめです。職場懇談会と懇親会を効果的に組み合わせることで、コミュニケーションの活性化や、課題の早期発見・改善、そして強固なチームづくりにつながるでしょう。
手間はかかるものの、職場懇談会の開催を検討している場合には、ぜひあわせて懇親会の開催も検討してみてください。