更新日:2025年5月20日
デジタルマーケティングが普及した現在でも、実際に製品やサービスを見込み客に体験してもらえる貴重な機会として、多くの会社が展示会を開催しています。展示会の開催形式にはさまざまな種類があるため、それぞれのメリット・デメリットを理解して、自社に合った方法で開催しましょう。
本記事では、展示会の概要から日本国内の動向、種類や開催形式、効果的な企画例まで、幅広く解説します。
展示会は、会社や団体などが自社の製品やサービスを紹介するために開催・出展するイベントです。複数の会社が一つの会場に集まり、各社が個別にブースを設けて製品やサービスを展示し、担当者が来場者に向けて説明を行う形が一般的です。規模の大きい会社の場合は、自社のみで展示会を開催することもあります。
展示会の主な目的には、新規顧客の獲得や、既存顧客との関係強化、新製品・サービスの発表、認知度の向上、競合との差別化などが挙げられます。来場者は製品に直接触れたり、担当者と直接対話したりすることで、オンラインでは得られない体験ができるのが特徴です。
日本における展示会の動向を把握するには、一般社団法人日本展示会協会が公表している調査結果「2019 年にわが国で開催された展示会実績調査~年間 20 社・71 団体が 600 件超の展示会を開催~」が参考になります。同協会では、国内で開催された展示会の実績をもとに展示会業界全体の動向を集計・分析しており、業界全体の傾向を知ることができます。
2021年1月に一般社団法人日本展示会協会が発表した調査結果「2019 年にわが国で開催された展示会実績調査~年間 20 社・71 団体が 600 件超の展示会を開催~」によると、2019年には91の主催者(20社・71団体)が603件の展示会を開催しました。
展示会の総出展面積は約193万平方メートルで、出展した会社・団体数は77,041、1社・1団体当たりの出展面積の平均は約21,200平方メートルです。来場者数は749万人を超えており、多くの人が展示会に興味を持って足を運んでいることがわかるでしょう。
同調査によると、展示会のカテゴリー別では、BtoBが565件(約93.7%)と大半を占めています。BtoCが17件(約2.8%)、会社・消費者の双方を対象としたBtoBCは21件(約3.5%)です。
また、月別の開催状況を見てみると、11月が最も多く、全体の12%にあたる74件の展示会が開催されています。次いで、2月、1月、10月、5月の順に多く、秋から冬にかけての開催が目立ちます。
展示会は、目的や対象者によって大きく3つに分類できます。それぞれの特徴と想定される来場者について見ていきましょう。
展示会の種類 | 概要 |
商談会 | 出展している会社と来場した会社が商談を行うための展示会 |
パブリックショー | 一般消費者に自社の製品やサービスを購入してもらうための展示会 |
プライベートショー | 会社が単独で主催し、既存の顧客や見込み客を招待する展示会 |
商談会は、出展している会社と来場した会社が商談を行うための展示会です。多くの会社が一つの会場に集まり、自社の製品やサービスを紹介します。
来場者の多くは、業界関係者や専門家、バイヤー、会社の購買担当者などです。情報収集を主な目的として来場しており、その場での即時契約は多くないものの、将来的な顧客となる会社との出会いが期待できます。
パブリックショーは、一般消費者に自社の製品やサービスを見てもらい、購入してもらうための展示会です。商談会とは異なり、即売に重点が置かれています。東京モーターショーや東京ゲームショウが代表例です。
来場者は、新製品の情報を得たり、気に入った製品をその場で購入したりすることを目的としています。自社の製品やサービスの魅力をうまく伝えられれば、その場で購入につながる可能性もあります。そうした購買行動が期待できる点が、パブリックショーならではの特徴です。
プライベートショーは、会社が単独で主催し、既存の顧客や見込み客を招待する展示会です。一般には公開されず、開催する会社から招待された人のみが参加できます。
プライベートショーの主な目的は、新製品や既存製品の紹介、顧客との関係強化などです。来場者は、自社の製品やサービスに興味を持って来場しており、滞在時間は比較的長い傾向にあります。出展内容や演出はすべて自社の判断で決められるため、自社の魅力を的確に伝えやすいのが魅力です。
展示会は開催形式によっても大きく分類されます。主な形式には以下の3つがあります。
メリット | デメリット | |
リアル |
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オンライン |
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ハイブリッド |
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リアル展示会は、実際の会場に出展者と来場者が集まり、対面でコミュニケーションを取る展示会です。来場者は、実物の製品に触れながら、担当者の説明を受けられます。
リアル展示会では、来場者は製品を直接手に取ることが可能です。画面越しでは伝わりにくい操作性や質感を直接体験できるため、製品への理解が深まりやすくなります。
また、来場者と担当者が直接顔を合わせて会話できることから、表情や声のトーンといった非言語の情報も含めたコミュニケーションが可能となり、信頼関係を構築しやすい点もメリットです。担当者は来場者の反応から顧客の関心やニーズを即時に捉えて、適切にアプローチできます。
リアル展示会の主なデメリットは、会場の確保やブースの設営などに多くの費用がかかることです。企画の立案や運営に加えて、機材の搬入や設営作業なども行わなければならず、準備にかかる手間も少なくありません。
また、開催場所や時間があらかじめ決まっており、遠方に住む人や日程の都合が合わない人は、関心があっても参加しづらい状況にあります。特に地方や海外の顧客に対しては、十分に集客できない可能性があります。
オンライン展示会は、インターネット上で製品やサービスを紹介する展示会です。参加者はPCやスマホから出展している会社の情報を閲覧したり、オンライン商談を行ったりします。
オンライン展示会は、地理や時間の制約がなく、世界中どこからでも参加できるため、遠方の見込み客や海外の顧客にも効率よくアプローチできます。来場者の閲覧履歴や滞在時間などの行動データを取得し、分析すれば、今後の営業戦略やマーケティング施策に活かせる点もメリットです。さらに、会場費や設営費がかからないため、リアル展示会に比べて低コストで開催できます。
オンライン展示会のデメリットとしてまず挙げられるのは、来場者が実物に触れる体験ができず、製品の質感や操作性といった感覚的な魅力が伝わりにくいことです。さらに、信頼関係を築くまでに時間がかかることから、購入や導入の判断に至らないこともあります。参加者は自宅や職場など自由な環境から参加するため、集中力が途切れやすく、没入度が下がってしまうことも課題となっています。
ハイブリッド展示会は、リアルとオンライン両方の形式を組み合わせた展示会です。実際の会場での展示と並行して、オンラインでも展示内容を閲覧したり商談したりできます。
リアルとオンラインそれぞれの利点を活かしながら、より多くの顧客にリーチできる点がハイブリッド展示会のメリットです。リアル会場に来られない遠方の顧客にも、オンラインを通じて製品の情報を伝えられるため、これまで接点を持ちにくかった層にも情報を届けられます。さらに、リアル展示会で実施した実演映像をライブ配信することで、オンライン参加者にも臨場感のある体験を提供することが可能です。
ハイブリッド展示会では、リアルとオンライン両方の準備が必要となるため、人的・金銭的コストが増大します。両方の形式に精通したスタッフの確保や育成も欠かせません。
また、リアルとオンラインの参加者間で体験の質に差が生じる恐れもあります。両方の参加者に一貫した体験を提供するには、配信環境やシステム面での技術的な対応が必要であり、それぞれの形式の特性を活かしたコンテンツ設計が求められます。
展示会への出展には様々なメリットがあります。ここでは主なメリットを3つ説明します。
展示会の来場者は、特定の業界や製品・サービスにすでに関心を持っていることが多いです。直接会話することで信頼関係を構築しやすく、具体的な提案にも繋げやすいため、質の高いリードを獲得できます。
また、自社の製品・サービスを知らない潜在顧客へのアプローチも可能です。声かけや実演を通じて製品・サービスの魅力を伝えられるため、新たな見込み客を獲得するきかっけになります。
展示会は、自社の認知度を高められる絶好の機会です。目を引くブース設計や、目的に応じたプロモーションを展開することで、来場者の記憶に残りやすく、認知度の向上を期待できます。また、展示会は業界のメディアからの注目も集まりやすく、取材や記事掲載といったメディア露出の機会を得られる可能性もあります。
展示会では、同業他社の製品やサービス、マーケティング手法などを直接観察できるため、市場動向や競合他社の戦略を把握するのに役立ちます。競合他社のブースを訪問したり、配布資料を収集したりすることで、自社の位置づけを確認できて、今後の改善点が見つかるでしょう
展示会出展には多くのメリットがある一方で、事前に把握しておきたいデメリットもあります。ここでは、主なデメリットと対策を紹介します。
展示会の出展には、出展料に加えて、ブースの設営費や装飾費、人件費、交通費、宿泊費、宣伝費、ノベルティ製作費など、さまざまな費用が発生します。特に規模の大きな展示会では、出展費用が高額になる傾向にあります。
出展費用を抑えるためには、展示会の規模や目的に合わせた予算計画を立てることが重要です。さらに、流用できる什器やパネルの採用、共同出展の検討、助成金や補助金の活用などを検討することもおすすめです。出展後は費用対効果を測定し、次回以降の投資対効果を最大化するための判断材料としましょう。
展示会の準備には、ブースの設計や展示物の準備、担当者の育成、当日の運営など、多くの作業が必要です。また、出展後のフォローアップも欠かせない作業の一つとなっています。
出展にかかる負担を軽減するには、早めの準備開始と、明確な役割分担が効果的です。確認リストを作成して進行管理を行い、抜け漏れがないように準備しましょう。必要に応じて、展示会の出展経験が豊富な業者に相談したり、一部の業務を外注したりするのも、一つの手です。
展示会に出展しても、必ずしも商談や成約に結びつくとは限りません。ブースの設計や運営などが適切でない場合は、期待した成果が得られないことがあります。
できるだけ商談や成約に繋げるためには、自社のターゲット層が多く来場する展示会を選ぶことがおすすめです。さらに、集客方法やブース設計、製品の説明などを工夫し、展示会後に迅速かつ丁寧なフォローアップを行うことで、商談や成約に繋がりやすくなります。
展示会をさらに魅力的にし、来場者の記憶に残るものにする企画を8つ紹介します。
ステージプレゼンテーションは、ブース内や特設スペースにて、製品・サービスの特徴や活用事例、業界の最新トレンドなどについて発表する企画です。時間を区切って定期的に実施することで、多くの来場者に情報を効率的に伝えられます。
【展示会におすすめの理由】
体験型デモンストレーションは、来場者が実際に製品・サービスを体験する企画です。製品の使い心地や効果を実感してもらえるため、効果的に来場者の購入意欲を高められます。
【展示会におすすめの理由】
業界の専門家や著名人、自社の技術者などを招いて討論する企画です。業界の課題や未来などについて、多角的な視点から深い議論を行うことにより、来場者に新たな視点や気づきを提供します。モデレーターが議論を進行し、最後に来場者からの質問を受け付けると、双方向のコミュニケーションを促進します。
【展示会におすすめの理由】
ビンゴ大会は、展示会ブースを訪れた来場者にビンゴカードを配布し、ビンゴを行う企画です。数字の代わりに製品・サービスやブース内の展示物に関連した内容を盛り込んだオリジナルのカードを使用すると、自社製品・サービスへの来場者の理解を深められます。当選者には自社製品や関連グッズをプレゼントすれば、来場者の参加率を高められるでしょう。
【展示会におすすめの理由】
撮影スポットの設置は、SNS映えする撮影スポットをブース内に設置する企画です。背景やフレーム、小道具などを用意して、会社のロゴや製品と一緒に写真が撮れるよう工夫します。来場者に写真を撮影してもらい、ハッシュタグをつけてSNSに投稿してもらうことで、拡散効果も期待できます。
【展示会におすすめの理由】
ワークショップは、来場者が特定の技術やテーマについて学ぶための講座を開催する企画です。具体的には、自社製品・サービスを活用して作品を制作したり、業界に関連する技術を学べる講座を開催したりします。
【展示会におすすめの理由】
クイズラリーは、ブース内に設置された展示物の情報をもとにクイズを出題し、ブース内を巡って回答してもらう企画です。全問正解者や参加者に特典や景品を用意することで、参加率を高められます。
【展示会におすすめの理由】
スタンプラリーは、複数のブースを回ってスタンプを集める企画です。関連会社や協業している会社と共同で実施することで、相互送客の効果があります。スタンプを集めた来場者には、参加した会社と共同製作したノベルティや特典を提供します。
【展示会におすすめの理由】
展示会に出展する際に押さえておきたいポイントを紹介します。
展示会に出展する前には、まず何を達成したいのかを明確にしましょう。目的が曖昧の場合、展示内容に一貫性がなくなり、来場者に自社製品・サービスの魅力を十分に伝えられない可能性があります。
例えば、新規顧客を獲得したいのであれば、来場者との接点を増やすために体験型デモンストレーションの実施が有効です。新製品・サービスの発表を目的とするなら、ステージプレゼンテーションの実施など、注目を集める工夫を施すとよいでしょう。
出展の目的を明確にしたら、「名刺交換○○件」「商談数△△件」など、具体的な目標を設定しましょう。目標を数値で可視化することで、出展後に成果を測定しやすくなり、達成状況を一目で把握できるようになります。その結果、課題や改善点を見つけやすくなり、次回以降の展示会の質を向上させることが可能です。
展示会ブースの設計では、来場者が立ち寄りやすく、スムーズに回遊できる動線作りが重要です。入口は一目でわかる場所に設け、中の様子も外から見えるように設計しましょう。
来場者の移動しやすさを意識し、左回りまた右回りの一方通行の動線を設計すると、来場者が迷わずブース内を回遊できます。通路の幅は最低でも120cmを確保し、混雑を避ける工夫も必要です。床から約150cmの高さに特に届けたい情報を配置すれば、来場者の視線に自然と入り、注目を集めやすくなります。
展示会出展の経験がない場合だけでなく、出展経験がある場合でもより効果的なブース設計や運営を目指すなら、専門のイベント業者に相談することをおすすめします。業者は豊富な経験と専門知識を持っており、効果的なブース設計や運営方法などについて、提案を受けることが可能です。
依頼には費用が発生するものの、自社だけで準備するよりも、効果的なブース作りや集客施策を実現できる可能性が高まります。展示会でより多くの成果を得たいのであれば、積極的にイベント業者の活用を検討するとよいでしょう。
展示会は、自社の製品やサービスの魅力を効果的に伝えて、顧客との信頼関係を築ける絶好の機会です。日本では年間600件以上の展示会が開催され、特にBtoBの分野で多く出展されています。
効果的な出展を実現するためには、出展目的の明確化や目標の数値化、動線設計の工夫というポイントを押さえて開催することがおすすめです。さらに、ステージプレゼンテーションや体験型デモンストレーションなど来場者が興味を持ちやすい企画を取り入れることで、より来場者の記憶に残る展示会を作り上げられます。必要に応じてイベント業者に相談しながら準備を重ねて、展示会の成功に繋げましょう。