更新日:2025年6月2日
目次
社員のモチベーション向上や優秀な人材の定着を図るために、多くの会社が注目している報奨旅行。一方で、「どのような効果があるのか」「どのように実施すればよいのか分からない」と悩む担当者の方も少なくないでしょう。
本記事では、報奨旅行の概要から実施状況、実施するメリット・デメリット、おすすめの企画まで幅広く解説します。
報奨旅行とは、優秀な成績を収めた社員や目標を達成した社員に対し、功績や努力を称えるために実施する旅行のことを指します。通常の社員旅行よりも内容が豪華である傾向にあり、旅行先では高級宿泊施設の利用など、日常では味わえない価値の高いサービスが提供されるのが一般的です。
報奨旅行と社員旅行には、対象者目的、実施内容、費用の扱いなどに明確な違いがあります。以下に主な違いをまとめました。
項目 | 社員旅行 | 報奨旅行 |
参加対象 | 全社員(希望者) | 成績優秀者のみ |
目的 | コミュニケーションを促進する | 社員のモチベーションを向上させる |
費用負担 | 会社負担(一部社員負担もあり) | 全額会社負担 |
税務処理 | 福利厚生費 | 給与・賞与 |
内容・グレード | 一般的なレベル | 豪華・特別感を重視 |
実施頻度 | 年1回程度 | 不定期・成果に応じて |
選考基準 | なし | あり |
社員旅行は、全社員を対象に、親睦を深めるために実施する旅行です。会社の福利厚生の一環として実施され、参加費用の一部を社員が負担することもあります。実施頻度は年1回程度です。
一方、報奨旅行は成果を上げた社員のみが参加できる旅行です。費用は全額会社負担となり、税務上は給与・賞与として扱われます。
2019年に株式会社エアトリが実施した報奨旅行に関する調査の結果によると、報奨旅行を実施している会社の割合は14.7%となっており、まだ導入していない会社が多数を占めています。しかし、調査回答者の7割以上が「報奨旅行制度があれば仕事に対するモチベーションが上がる」と回答しており、社員の制度に対する期待は高いことが分かります。
業種別に報奨旅行の実施状況を見てみると、金融・保険、マスコミ・広告・デザイン、メーカーなどで導入率が高い傾向にあります。
産業 | 実施割合 |
金融・保険 | 33.3% |
マスコミ・広告・デザイン | 31.3% |
メーカー | 23.6% |
サービス・レジャー | 22.0% |
運輸・交通・物流・倉庫 | 17.6% |
環境・エネルギー | 16.7% |
IT・通信・インターネット | 15.2% |
不動産・建設・設備 | 14.4% |
流通・小売り・フード | 12.5% |
商社 | 10.7% |
コンサルティング | 8.3% |
公的機関 | 4.5% |
その他 | 7.7% |
参考:株式会社エアトリ『7 割以上が「インセンティブ旅行」でモチベーションが“上がる”と回答
定番の旅行先は人気ビーチリゾート地「ハワイ」~エアトリが「インセンティブ」に関する調査を実施~』
報奨旅行の主な目的は、社員の意欲を高め、会社全体の成果向上につなげることです。
報奨旅行のメンバーに選ばれた社員には、日常ではなかなか味わえないような特別な体験が提供されます。その体験は強く印象に残り、社員のモチベーションを長期的に維持することが可能です。また、他の社員にとっても「自分も成果を出して報奨旅行に参加したい」という明確な目標となり、前向きな意識を育むきっかけになります。
そのような好循環は、チーム全体の業績向上や、社内における協力体制の強化にも寄与します。
報奨旅行の実施には、会社にとって様々なメリットがあります。ここでは主なメリット3つについて紹介します。
報奨旅行のメリットのひとつは、社員のモチベーションの向上です。魅力的な報奨を用意することで、社員は目標達成に向けて積極的に取り組むようになります。例えば、年間の売上目標を達成した営業担当者にヨーロッパ旅行を提供する制度を設けた場合、通常の金銭報酬とは異なる「特別な体験」が動機付けとして機能します。
また報奨旅行には、参加者が「会社に認められた」という実感を得られる効果もあります。同僚や家族に対しても誇らしい気持ちで報告できるため、仕事へ取り組む姿勢がより前向きになるでしょう。
報奨旅行は、会社の理念や価値観を浸透させる絶好の機会でもあります。選考基準として「どのような行動や成果を評価するのか」を明示することで、会社が重視する姿勢などについて具体的に示すことができます。
例えば、売上実績だけでなく、チームワークへの貢献や顧客対応も評価基準に含めるとしましょう。その場合、協調性や顧客志向など、会社が大切にしたい価値観を自然に共有できます。また、旅行中のプログラムに経営陣との懇談会を組み込むことで、直接的に理念の浸透を図ることも可能です。
報奨旅行制度は、優秀な人材の定着率の向上に大きく貢献します。成果が適切に評価され、魅力的な報奨を受けられる環境があることで、優秀な人材の流出を防ぎ、長く働き続けたいと思われる職場になります。
また、成果主義を重視する求職者にとっては、報奨旅行制度の有無は会社選びの重要な判断材料です。報奨旅行に参加した社員の体験談や写真を採用活動で使用すれば、向上心の高い優秀な人材の応募を促進する効果も期待できます。
報奨旅行には多くのメリットがある一方で、実施にあたって注意すべきデメリットもあります。適切な対策を講じるために、ここでデメリットについて理解しておきましょう。
報奨旅行の選考基準が曖昧だったり、恣意的な判断が疑われたりする場合、選考から漏れた社員に不信感を持たれてしまう可能性があります。特に、売上実績などの定量的な指標だけでなく、チームワークや姿勢などの定性的な評価も含める場合は注意が必要です。
例えば、営業成績とチームワークを評価基準とした場合、チームワークの評価が主観的になりやすく、「なぜあの人が選ばれたのか分からない」といった声があがることがあります。そのような状況が続くと、制度への信頼が失われ、かえってモチベーションの低下を招くことにもなりかねません。
そのため、選考基準を事前に明確に定め、全社員に周知しましょう。また、選考プロセスの透明性を高め、選考理由を説明できる体制を整えておくことが求められます。
報奨旅行制度が過度な競争を生み出し、社員間の協力関係に悪影響を及ぼす可能性があります。特に個人の成果のみを評価基準とした場合、同僚を出し抜くために情報共有を控えたり、他の社員の成果を妨げようとする行動が発生したりすることがあります。そのような状況はチーム全体のパフォーマンス低下を招き、長期的には会社の競争力を損なう結果となるでしょう。
チーム全体のパフォーマンスの低下を防ぐには、個人の成果だけでなく、チームへの貢献度や協調性も評価に含めることがおすすめです。チーム単位での報奨旅行制度を併用すると、社員同士が自然に協力し合う関係を築きやすくなります。
報奨旅行は通常の社員旅行よりも豪華な内容であることが多いため、一人当たりの費用が高くなる傾向があります。特に海外旅行の場合、交通費や宿泊費、食事代、現地でのアクティビティ費用などを含めると、一人当たり数十万円となる場合もあります。
参加者が多い場合や、複数回実施する場合は、年間での費用総額が会社の財務に与える影響も小さくありません。加えて、為替レートの変動や旅行時期による料金変動により、予算の管理が難しくなることもあります。
できるだけ費用負担を抑えるためには、費用対効果を慎重に検討し、会社の財務状況に応じて適切に予算を設定しなければなりません。まずは国内旅行から始めるなど、段階的なアプローチも検討しましょう。
報奨旅行において、行き先の選定は参加者の満足度を左右する重要な要素です。株式会社エアトリが公開した報奨旅行に関する調査の結果によると、人気の行き先は以下のようになります。
順位 | 海外の人気行き先 | 国内の人気行き先 |
1位 | ハワイ (44.1%) | 北海道・沖縄県 (38.2%) |
2位 | アメリカ本土 (34.4%) | – |
3位 | グアム (28.0%) | 東京都 (27.3%) |
4位 | 韓国 (25.8%) | 神奈川県 (25.5%) |
5位 | 台湾 (22.6%) | 京都府 (23.6%) |
6位 | 中国・オーストラリア(20.4%) | 静岡県(21.8%) |
7位 | フランス(19.4%) | 大阪府・兵庫県・長崎県(18.2%) |
8位 | イタリア(18.3%) | – |
9位 | インドネシア(17.2%) | – |
10位 | タイ(16.1%) | 栃木県・千葉県・長野県・福岡県・大分県(16.4%) |
参考:株式会社エアトリ『7 割以上が「インセンティブ旅行」でモチベーションが“上がる”と回答
定番の旅行先は人気ビーチリゾート地「ハワイ」~エアトリが「インセンティブ」に関する調査を実施~』
海外では、非日常を味わえるリゾート地が高い人気を集めています。中でもハワイは、日本人にとって親しみやすく、豊富なアクティビティと美しい自然が魅力です。
一方国内では、北海道と沖縄が同率で1位を獲得しており、こちらも非日常感を味わえる場所が選ばれる傾向があります。
報奨旅行は、成果を上げた社員への報酬として提供される特別な体験です。参加はあくまで任意であるべきであり、決して強制してはいけません。強制参加となると、本来の報奨としての意味が失われ、むしろストレスを与えてしまう可能性があります。
報奨旅行への参加は強制せず、参加者が自発的に「ぜひ参加したい」と思うような魅力的な企画を用意することが重要です。
以下では、報奨旅行をより充実したものにするためのおすすめの企画を9つご紹介します。
企画名 | 概要 |
ビンゴ大会 | カードの数字をマークして縦・横・斜めのいずれかの列が揃ったら勝利となる。運要素が強く、誰でも勝つ可能性がある |
クイズ大会 | 一般常識から会社関連まで幅広い問題を出題し、知識と推理力を競う。個人戦・チーム戦のどちらでも実施可能 |
格付けバトル | 俳句・紅茶・絵画・牛肉の分野で「一流の品」を見極める。五感を使うため、印象に残りやすい |
宝探し | 指定されたエリア内に隠された宝物やヒントを、地図や謎解きを頼りに探し出す。誰でも童心にかえって楽しめる |
BBQ | 自然の中でリラックスしながら、肉や野菜などを焼いて食べる。準備から片付けまで協力し合うことで、参加者同士の交流が深まる |
社内表彰式 | 参加者の功績を経営陣が改めて称える。通常とは違う場所で行うため、参加者の記憶に残りやすい |
ラフティング | 6〜8人乗りのゴムボートで川を下る。全員の協力で楽しみながらチームワークを育める |
サバイバルゲーム | 敵味方に分かれ、エアソフトガンを用いて戦う。勝利するためには、戦略とチームワークが必要 |
クルージング | 貸切船やクルーザーで海上を周遊しながら食事や景色を楽しむ。本格的な料理を提供できるほか、音楽演奏や表彰プログラムなどを組み合わせることも可能 |
複数の企画を組み合わせることで、より充実したプログラムを構築することが可能です。
ビンゴ大会では、司会者が数字を読み上げ、参加者は自分のビンゴカードの中から該当する数字にマークを付けていきます。縦・横・斜めのいずれかの列が揃った人から順番に勝利となる、運の要素が強いゲームです。
より会場を盛り上げるためには、景品を用意することがおすすめです。1等から参加賞まで段階的に景品を用意し、実用性の高いものから面白い景品まで幅広く取り揃えることで、最後まで全員が楽しめます。また、リーチがかかった時点で手を挙げてもらうなど、ゲームに緊張感を演出するのも効果的です。
クイズ大会では、一般常識や時事問題、会社の歴史や理念、旅行先に関する問題など、幅広いジャンルの問題を出題し、知識や推理力を競います。個人戦・チーム戦のどちらでも実施可能で、正解数に応じてポイントを獲得します。
問題が簡単すぎると面白みがなく、難しすぎると参加者が諦めてしまうため、7割程度の人が正解できる問題を中心に、難問や面白問題を織り交ぜるとよいでしょう。また、会社に関する問題を含めることで、楽しみながら会社の理解を深めることもできます。
格付けバトルは、人気テレビ番組のような形式で、俳句、紅茶、絵画、牛肉の4つのジャンルから「一流の品」を見極めるアクティビティです。参加者は実際に紅茶の香りを嗅いだり、絵画を鑑賞したりして、どれが最も高級で価値のあるものかを判断します。
参加者の回答はリアルタイムで集計され、司会者が正解を発表する前に、誰がどの選択肢を選んだのかを確認できます。個人戦だけではなく、チーム戦で実施することも可能です。
宝探しは、指定されたエリア内に隠された宝物やヒントを、地図や謎解きを頼りに探し出すゲームです。個人またはチームに分かれて行い、制限時間内に最も多くの宝物を見つけたり、本当の宝物にたどり着いたりした個人またはチームが勝利となります。旅行先の観光地や宿泊施設の敷地内を舞台にすることで、その土地の魅力を発見しながらゲームを楽しむことが可能です。
社員に宝探しを楽しんでもらうためには、ヒントの難易度設定が重要です。あまりに簡単すぎると達成感がなく、難しすぎると途中で諦めてしまうため、段階的にヒントを用意したり、困った時のサポート体制を整えたりしておきましょう。また、途中経過を参加者で共有することで、競争感を演出できます。
BBQ(バーベキュー)は、屋外で炭火や鉄板を使って肉や野菜などを焼き、参加者で食事を楽しみながら交流する企画です。食材の準備から火起こし、調理、片付けまでを参加者同士で協力して進めるため、自然に交流が深まる点が特徴です。また、食材にこだわりの肉や地元の特産品などを用意することで、特別感を演出できるでしょう。
天候に左右されやすいため、屋根付きの施設や雨天時の代替案も準備しておくと安心です。
参加者の功績を、旅行先で改めて成果を称えるのも、報奨旅行におすすめです。経営陣から直接表彰状や記念品を受け取り、その功績を参加者全員で称えます。普段のオフィスとは異なる場所で実施することで、より強く印象に残る表彰式となります
思い出として記録に残すために、写真撮影の時間は十分に確保しましょう。撮影した写真や動画を、社内報や採用広報に活用すれば、努力が認められる風土であることを社内外に伝えることが可能です。
ラフティングは、6〜8人乗りのゴムボートに乗り、パドルを使って川を下るウォータースポーツです。流れのある川を進むには全員の呼吸を合わせる必要があり、自然とチームワークが育まれます。激流を下る際のスリル感と、チーム一丸となって困難を乗り越える達成感を同時に味わえる点も、魅力です。
ウェットスーツ、ヘルメット、ライフジャケットを着用し、事前に基本的な講習を受けたうえで行うため、初心者でも安心して参加できます。
サバイバルゲームは、敵と味方に分かれ、エアソフトガンを使用して戦うゲームです。参加者は迷彩服やゴーグル、ヘルメットなどの装備を身に着け、戦場にいるかのような緊張感の中でゲームを楽しみます。
勝利を目指すには、戦略的思考に加えて、チームとの連携も不可欠です。また、普段のオフィスワークでは使わない瞬発力も必要で、参加者の新たな一面を発見する機会にもなるでしょう。
クルージングは、貸切船やクルーザーで海上を周遊しながら、食事や景色などを楽しむ企画です。移り変わる海の景色を眺めながら過ごす時間は、日常では味わえない優雅で特別なひとときになります。
船内では本格的なコース料理やビュッフェスタイルの食事を提供できるほか、音楽演奏や表彰プログラムなどを組み合わせることも可能です。
報奨旅行で発生する費用は、社員旅行のように福利厚生費では処理できず、「給与」または「賞与」として処理する必要があります。これは、報奨旅行の参加者が限定されており、労働の対価として支給される性質を持つためです。
一般的な社員旅行で福利厚生費として処理できるのは、以下の条件を満たす場合です。
報奨旅行は参加者を優秀な成績を収めた社員に限定しているため、「全従業員の50%以上が参加する」という条件を満たさず、福利厚生費として扱うことができません。
したがって報奨旅行の費用は、参加者にとって課税対象の所得とされ、源泉徴収の対象となります。会社側には適切な税務処理が求められ、参加者に対しても事前にその点について説明しておくことが重要です。
報奨旅行を実施すると、社員のモチベーションを高められる上に、会社の理念の浸透や、優秀な人材の定着・採用力の向上といった様々なメリットが期待できます。一方で、選考基準の不透明さや過度な競争、費用面などの課題もあるため、実施にあたっては慎重な検討が必要です。
報奨旅行を成功させるためには、参加者の心に残る体験づくりが求められます。本記事では、報奨旅行の概要から実施のメリット・デメリット、おすすめの企画アイデアまでをご紹介しました。これから報奨旅行を検討する場合は、ぜひ本記事で紹介した企画アイデアを参考に、参加者の満足度の高い旅行を計画してください。