更新日:2025年6月2日
近年、働き方改革やワークライフバランスに注目が集まる中、社員の家族に会社への理解を深めてもらう「ファミリーデー」を実施する会社が増加しています。しかし、どのように実施すればよいのか、頭を悩ませる担当者も少なくありません。
本記事では、ファミリーデーの概要や開催のメリット、準備の手順、おすすめの企画について詳しく解説します。
ファミリーデーとは、社員の家族やパートナーを会社のオフィスや外部会場に招いて行う社内イベントのことです。配偶者や両親に加えて、時には友人まで幅広い関係者を招待する場合もあります。
職場見学にとどまらず、様々なレクリエーション活動やワークショップなどを通じて家族ぐるみの交流を図るのがファミリーデーの特徴です。開催場所はオフィスに限らず、ホテルや会議室などの外部会場を利用するケースも増えています。
ファミリーデーをいつ実施するかは、各々の会社の判断に委ねられていますが、多くの会社では子どもたちの夏休み期間を狙って7月から8月にかけて開催する傾向があります。この時期であれば、学校の行事と重ならず、家族全員が参加しやすいからです。
その他にも、業務の繁忙期を避けた週末や祝日、最近ではプレミアムフライデーを活用するなど、会社の事情や参加者の都合に合わせて柔軟に設定するケースも見られます。
ファミリーデーの実施には、社員やその家族だけでなく、会社にとっても多くのメリットがあります。ここでは、主な4つのメリットについて説明します。
ファミリーデーを通じて家族から仕事への理解と応援を得ることで、社員は自分の仕事に誇りを持ち、より高いモチベーションで業務に取り組むようになります。さらに、家庭での支えが得られることで、精神的な安定が生まれ、業務にも集中しやすくなります。
たとえば、残業や休日出勤が必要になった際にも、家族がその仕事の重要性や意義を理解していれば、応援の言葉をかけてもらいやすくなります。このような環境は、個人のパフォーマンス向上につながり、会社全体の生産性の底上げにも寄与します。
ファミリーデーでは、普段の業務では見ることのできない同僚や上司、部下の一面を発見する機会があります。たとえば、厳格な上司が子どもの前では優しいパパの顔を見せたり、普段クールな同僚が家族と楽しそうに過ごしている姿を目にしたりすることもあるでしょう。
このような体験を通じて、日常業務においてもお互いの家庭の事業に配慮した、思いやりのある働き方が促進されます。子どもの学校行事で早退する同僚に対しても、「お疲れさま、○○ちゃんの運動会頑張って」といった温かい声かけが自然に生まれるようになり、会社全体の雰囲気が和やかになります。
ファミリーデーに参加する社員の家族構成は、核家族、三世代同居、単身者、国際結婚などと様々です。多様な家族に触れることで、互いの違いを尊重し合う文化の醸成につながります。
たとえば、ひとり親家庭の社員が子どもと参加することで、その様子を見た同僚や上司が育児との両立に対する理解を深める機会になります。さらに、同性パートナーとともに来場する社員の姿を通じて、家族の形には多様な在り方があることが自然に共有されるでしょう。
ファミリーデーの開催は、「社員とその家族を大切にする会社」というポジティブなイメージを社内外に発信する効果があります。参加した家族が「素晴らしい会社で働いている」と感じてくれれば、それは自然な口コミとなって会社のブランドイメージの向上に寄与します。
また、ファミリーデーの様子をSNSや会社のホームページで発信することで、ワークライフバランスに配慮した働きやすい会社であることを社外に示すことも可能です。採用活動において有利に働き、優秀な人材を獲得しやすくなります。さらに、取引先や顧客からも「社員を大切にする信頼できる会社」として高く評価され、取引の面でもプラスに影響する可能性もあります。
ファミリーデーを成功させるためには、計画的な準備と段階的な実行が不可欠です。ここでは、企画立案から開催後の振り返りまで、6つのステップに分けて開催の流れをご紹介します。
ファミリーデーの成功は、適切な担当者選定から始まります。まず、プロジェクト全体を統括するメインリーダーを1〜2名選定し、その下に以下の役割ごとに担当者を配置します。
担当者選定の際は、できるだけ多くの部署から人員を選出し、業務の繁忙期を考慮して特定の人に負担が集中しないよう注意が必要です。
理想的には、コミュニケーション能力が高く、イベント企画の経験がある人材をリーダーに据え、各部署の若手からベテランまで幅広い年齢層のメンバーでチームを構成します。家族を持たない社員についても、運営側として積極的に参加してもらうことで、全社的な取り組みとして位置づけることができます。
開催日時の決定には、社内アンケートの実施が効果的です。参加予定者の家族構成、希望する開催時期、参加しやすい時間帯などを事前に調査し、最も多くの人が参加できる日程を選択します。調査項目には、家族の人数や年齢構成も含めることで、当日のプログラム内容や必要な準備物の検討にも活用できます。
日程調整では以下のポイントを考慮する必要があります:
決定した日程は、参加者が予定を調整しやすいよう早めに社内に周知し、参加者の都合を最大限配慮した開催時期を設定することが重要です。
プログラム検討では、参加者の年齢層や興味関心に合わせた内容を企画します。職場見学やお仕事体験といった定番プログラムに加え、クイズ大会やワークショップなど、家族全員が楽しめるレクリエーション要素も重要です。企業の特色を活かした独自のプログラムを組み込むことで、参加者により深い印象を残すことができます。
プログラム構成では、参加者が飽きないよう適度な休憩時間を設け、小さな子どもがいても安心して参加できるよう配慮します。
プログラムの詳細が固まったら、タイムスケジュールを作成し、当日の運営がスムーズに進むよう準備します。
プログラム内容に応じて、必要な物品や設備の手配を行います。主な準備物は以下の通りです:
外部業者を利用する場合は、ケータリングサービスやプロの司会者、パフォーマーなどの手配も必要です。見積もりを複数社から取得し、予算内で最適なサービスを選択します。また、当日配布する資料や案内書類の作成、参加者名簿の整理なども忘れずに行います。
本番前には必ずリハーサルやシミュレーションを実施し、当日の流れを確認します。スタッフ全員でタイムスケジュールを共有し、それぞれの役割と動線を明確にします。
【リハーサル時の主なチェックポイント】
シミュレーション中に発見した問題点は速やかに改善し、当日のトラブルを最小限に抑えます。また、屋外イベントの場合は雨天時の室内代替案を、参加者数が予想より増減した場合の座席や食事の調整方法も事前に決めておきます。
ファミリーデー終了後は、参加者と運営スタッフの両方からフィードバックを収集します。アンケート調査を実施し、満足度や改善点、次回への要望などを詳しく聞き取ります。参加した社員、その家族、運営に関わった社員それぞれの立場から意見を収集することで、多角的な評価が可能になります。
収集したフィードバックは分析し、成功要因と改善点を明確にします。良かった点は次回も継続し、問題があった点は具体的な改善策を検討します。振り返り結果は社内で共有し、次回開催時の参考資料として保管します。また、今回の経験を活かして、より良いファミリーデー開催のためのノウハウを蓄積していきます。
ファミリーデーを盛り上げるためには、参加者の年齢層や興味に応じた多様な企画を用意することが重要です。ここでは、多くの企業で実施され、高い満足度を得ている10の企画をご紹介します。
チャンバラ合戦は、痛くないスポンジ製の刀を使用して行う安全な合戦ゲームです。参加者は腕に「命」となるボールを装着し、チーム戦で相手チームの命を狙います。5歳以上であれば誰でも参加でき、年齢や性別、体力差に関係なく楽しめるのが特徴です。
作戦会議と合戦を繰り返すことで、自然とPDCAサイクルを体験できるため、チームビルディング効果も期待できます。ルールが分かりやすく、言葉が通じなくても楽しめるため、国際色豊かな職場でも安心して実施できます。
クイズ大会は、会社に関する問題から一般常識まで、幅広いジャンルの問題を出題する参加型イベントです。企業の歴史や事業内容、商品・サービスに関する問題を交えることで、家族に会社への理解を深めてもらうことができます。年代別に難易度を調整したり、チーム戦形式にしたりすることで、全員が楽しめる内容に調整可能です。
クイズの特徴は、知識レベルに関係なく運の要素もあるため、誰にでも勝機があることです。正解発表の際に解説を加えることで、学習効果も期待できます。
ビンゴ大会は、数字を読み上げてカードの数字と照らし合わせる、誰もが知っているゲームです。ルールが簡単で年齢を問わず参加でき、運次第で誰でも勝者になれる平等性があります。景品を用意することで参加者のモチベーションを高めることができ、企業オリジナルグッズや協賛品を景品にすることも可能です。
ビンゴの進行中は自然と会話が生まれ、緊張感と期待感を共有することで参加者同士の距離が縮まります。また、デジタル化することでオンライン開催にも対応できます。
普段の職場の様子を撮影した映像を上映することで、家族に社員の働く姿を見てもらう企画です。会議の様子、製造現場での作業風景、社員同士のコミュニケーションの場面などを編集して、分かりやすいストーリー仕立てにします。ナレーションや字幕を加えることで、業務内容や企業の取り組みについても詳しく説明できます。
この企画の特徴は、実際の職場に立ち入れない場所の様子も紹介できることです。また、社員一人ひとりにスポットを当てることで、家族に働く姿を誇らしく見てもらうことができます。
ワークショップは、参加者が実際に手を動かして何かを作ったり体験したりする参加型の企画です。企業の事業内容に関連したものづくり体験、プログラミング教室、料理教室など、様々なテーマで実施できます。年齢に応じて難易度を調整し、親子で協力して取り組める内容にすることで、家族の絆も深まります。
ワークショップの魅力は、学習効果が高く、完成した作品を持ち帰ることで良い記念になることです。また、普段とは違う角度から企業の技術や知識に触れることで、事業への理解が深まります。
実際のオフィスや工場、店舗などを案内しながら見学してもらう企画です。普段は入ることのできないエリアも特別に開放し、社員が実際に働いている現場を間近で見てもらいます。各所に案内スタッフを配置し、業務内容や使用している機器について詳しく説明します。
職場体験ツアーの特徴は、リアルな職場環境を体感できることです。オフィスの雰囲気、最新の設備、働く社員の表情などを直接見ることで、家族の仕事への理解が格段に深まります。
プロのカメラマンによる記念撮影ブースを設置し、家族写真を撮影してプレゼントする企画です。企業ロゴや会社のマスコットキャラクターを背景にした特別な撮影セットを用意し、普段は撮れない記念写真を提供します。撮影した写真は後日プリントして参加者に送付するか、デジタルデータで提供します。
記念撮影の特徴は、形に残る記念品として長く保存されることです。家族にとって特別な思い出となり、写真を見返すたびにファミリーデーのことを思い出してもらえます。
参加者が気軽に飲食できる軽食コーナーを設置する企画です。サンドイッチやお菓子、飲み物などを用意し、リラックスした雰囲気で交流を楽しんでもらいます。可能であれば社員食堂のメニューを提供することで、社員の普段の食事環境も体験してもらえます。
軽食コーナーの特徴は、食事を通じて自然な会話が生まれることです。立食形式にすることで参加者同士の交流が促進され、普段は話す機会のない人同士もコミュニケーションを取りやすくなります。
参加した家族一人ひとりの写真を撮影し、オリジナルの社員証を作成してプレゼントする企画です。実際の社員証と同じデザインで作成し、「一日社員」としての特別感を演出します。名前や所属部署(家族の場合は「○○さんのご家族」など)を記載し、記念品として持ち帰ってもらいます。
オリジナル社員証の特徴は、参加者に特別な体験をしてもらえることです。会社の一員になったような感覚を味わうことで、企業への親近感と愛着が生まれます。
BBQは、屋外での調理と食事を通じて参加者同士の交流を深められるファミリーデー企画です。グリルで肉や野菜を焼きながら、リラックスした雰囲気の中で自然な会話が生まれます。準備から片付けまでを参加者全員で協力して行うため、チームワークが自然に育まれるのが特徴です。
BBQの魅力は、年齢や立場を問わず誰もが楽しめることです。大人は食材の調理を担当し、子どもたちは簡単な準備を手伝ったり、焼き上がりを待つ間にゲームを楽しんだりと、それぞれの役割を見つけることができます。また、屋外での開催により開放的な気分になり、普段のオフィスでは見られない社員の一面を発見する機会にもなります。
社内運動会は、様々な競技を通じて参加者全員が体を動かして楽しめるファミリーデー企画です。リレーや玉入れ、綱引きなどの定番競技から、バブルサッカーやチャンバラ合戦のような新感覚の種目まで幅広く実施できます。チーム戦形式で行うことで、家族や部署を超えた新たなつながりが生まれ、一致団結して目標に向かう体験ができます。
社内運動会の特徴は、競技を通じて達成感と一体感を同時に味わえることです。勝敗がはっきりしているため盛り上がりやすく、応援にも自然と熱が入ります。また、運動が得意でない人でも楽しめるよう、頭脳戦要素のある競技や運任せのゲームを組み合わせることで、全員が活躍できる場を作ることができます。
ファミリーデーを成功させるためには、企画段階から当日の運営まで、様々な点に配慮する必要があります。特に重要な3つのポイントについて詳しく解説します。
ファミリーデーを成功させるためには、社員とその家族が無理なく参加できる環境づくりが欠かせません。参加率を高めるには、気軽に足を運べるような配慮が必要です。たとえば、「仕事や家庭の都合で時間がとれない」「費用がかかるのではと心配」「小さな子どもや高齢の家族が過ごしにくそう」といった理由から、参加をためらうケースもあります。
こうした不安を軽減するために、開催時間は半日程度におさえて移動や準備の負担を減らし、費用は会社が負担することで経済的なハードルを下げましょう。また、授乳室やおむつ交換スペース、高齢の家族が休める場所などを用意し、幅広い家族構成に対応した環境を整えることも大切です。こうしたきめ細かな配慮が、誰もが安心して参加できるファミリーデーの実現につながります。
ファミリーデーは家族を持つ社員だけのイベントではありません。独身の社員や家族を招待しない社員も積極的に巻き込むことで、会社全体で取り組むイベントとして位置づけることができます。これにより、一部の社員だけが参加するイベントという印象を避け、組織全体の結束力向上に寄与します。
これらの社員には運営スタッフとして参加してもらい、イベントの企画や当日の進行をサポートしてもらいます。たとえば、若手社員にはキッズコーナーの担当を任せることで、子どもたちとの交流を通じて将来の家庭生活をイメージしてもらう機会にもなります。また、ベテラン社員には司会や会社紹介の役割を担ってもらうことで、豊富な経験を活かした貢献をしてもらえます。このような工夫により、参加する全ての社員が価値のある体験を得られるイベントにすることができます。
ファミリーデーでは多くの子どもが参加するため、安全対策は最重要課題です。会場内の危険箇所を事前にチェックし、子どもの目線で安全性を確認します。階段や段差には注意喚起の表示を設置し、鋭利な角がある家具にはクッション材を取り付けるなどの対策を講じます。
また、子どもが迷子にならないよう、受付で名札を配布し、保護者の連絡先を記載します。大きな会場では案内スタッフを多めに配置し、常に子どもたちの安全を見守る体制を整えます。さらに、アレルギー対応として、提供する食べ物の原材料表示を明確にし、事前に参加者からアレルギー情報を収集しておくことも重要です。
多数の外部者が社内に立ち入るファミリーデーでは、通常よりも厳格なセキュリティ対策が必要です。まず、参加者全員の身元確認を行い、事前に参加者リストを作成して受付で照合します。入場時には来訪者用のIDカードを配布し、常に身に着けてもらいます。
立ち入り可能エリアを明確に区分し、機密情報を扱う部屋や重要な設備には立ち入り禁止の表示を設置します。また、社内システムへのアクセス制限を強化し、重要なデータが保存されているパソコンは事前にログアウトしておきます。カメラやスマートフォンでの撮影についても、事前にルールを設定し、SNSへの投稿に関するガイドラインを参加者に周知しておくことが重要です。
ファミリーデーは、従業員とその家族、そして企業の三者すべてにメリットをもたらす価値の高い取り組みです。社員の生産性向上、社内交流の活性化、ダイバーシティ推進、企業ブランドイメージ向上といった多面的な効果が期待できます。
成功させるためには、適切な担当者選定から始まり、参加者のニーズを把握した企画立案、入念な準備と安全対策の実施が不可欠です。チャンバラ合戦やクイズ大会などの多様な企画を組み合わせることで、幅広い年齢層が楽しめるイベントを創出できます。
重要なのは、家族を持たない社員も含めた全社的な取り組みとして位置づけ、安全性とセキュリティを確保しながら実施することです。ファミリーデーは単なるイベントではなく、企業文化を醸成し、働きやすい職場環境を構築するための重要な戦略的施策といえるでしょう。ぜひ本記事を参考に、貴社らしいファミリーデーの企画・実施を検討してみてください。